うぃっす!ケントです!
アメリカのシリコンバレーバンクに次いで、シグネチャーバンクまで破綻し大きな話題になっていまね。
この記事ではその話題について少し考えていきたいと思います。
- シリコンバレーバンクとシグネチャーバンクとは?→アメリカの中堅銀行
- 2つの銀行はなぜ破綻したのか?→預金の引出しが一気に起きたことによる資金繰り破綻
- バイデン政権の対応は?→預金の全額保護という異例対応
- 今回の件による日本経済への影響は?→日本の銀行やIT企業等への影響は限定的
- 資産のリスク分散の必要性→投資をする対象は分散させるのが基本!
シリコンバレーとシグネチャーバンクについて
そもそも、この2つの銀行はどういった銀行だったのでしょうか。
シリコンバレーバンクはスタートアップ企業やベンチャーキャピタル(スタートアップ企業に投資をする会社)に対して積極的に融資をしていた銀行で、資産規模的には全米16位の中堅銀行でした。去年1年間でベンチャーキャピタルが出資するテクノロジーやヘルスケア関連の企業が行った株式の新規公開の44%はこの銀行と取引があったそうです。
また、シグネチャーバンクは2001年と歴史こそ浅い銀行ではあるものの、すでに40店舗を保有、暗号資産関連企業への融資に強みを持っており、全米29位の銀行でした。
補足ですが、今回の件はアメリカの銀行破綻の中では2番目、3番目の規模です。ちなみに1番目は2008年にリーマンブラザーズの倒産をきっかけとする金融危機の際に破綻した「ワシントン・ミューチュアル」なので、それに次ぐ規模と考えると今回の件も楽観視出来ないことがわかります。
2つの銀行はなぜ破綻したのか?
ではなぜ2つの銀行は破綻したのでしょうか?
シリコンバレーバンクが破綻した理由
まずシリコンバレーバンクですが、シリコンバレーという名前の通りでスタートアップ企業への融資に強みを持つ銀行として知られていました。スタートアップ企業の取引先が多いということが今回の件の引き金になっています。以下で詳しく見ていきましょう。
シリコンバレーバンクが破綻に追い込まれたのは3つの要因が重なった結果と見られています。
- 貸出先の資金繰り悪化
- アメリカ政府が行った金融政策による含み損増加
- SNSによる取り付け騒ぎ
1.貸出先の資金繰り悪化
一般的にスタートアップ企業というものは創業して間もない会社ですから、業歴の長い企業に比べて資金力はありません。そんなスタートアップ企業が資金調達をする手段として、ベンチャーキャピタルによる出資や銀行からの融資があるわけです。2020年の3月からはFRB(連邦準備制度理事会)によって大規模な金融緩和政策(市場に流れるお金を増やすこと)が実施されました。
その結果、スタートアップ企業も資金調達が容易になり、余剰資金はシリコンバレーバンクに預けられていたのです。
しかし、その後FRBが利上げを続けて行ったことによりスタートアップ企業の資金調達は難しくなりました。そういった時でも会社は固定費(従業員の給料など)は払わなくてはいけませんから、預金を引き出さざるを得なくなります。スタートアップ市場が変容し、大量の預金引出しが出たことが1つの要因です。
2.アメリカ政府が行った金融政策による含み損増加
先ほど、FRBについての話を少ししましたね。FRBとは日本でいう日銀のようなもので、アメリカの金融政策全体に関わっています。コロナ禍になってからFRBは大規模な金融緩和政策を行ったわけですが、2022年3月から一転して利上げを急ピッチで進めています。利上げや利下げは銀行の経営に大きく影響を及ぼすのです。
銀行はお客様からお預かりした預金をただ箱に入れておくだけではなく、国債等の運用商品で運用することによって利益を出しています。シリコンバレーバンクも金融緩和によってお客様から預けられた大量の預金を運用していました。しかし、FRBによる利上げの影響で、シリコンバレーバンクが保有する債券価格は下落していきました(一般的に金利が上がると債券価格が下落する関係があります)。
例えば1万円で買った債券が9,000円になると1,000円の損が出ていることになりますが、これを「含み損を抱えている」と言います。
ここで1.で話をした預金の引き出しが関わってきます。
預金者からの引出しの依頼があった時に「お金が足りないので対応できません」では話になりませんから、含み損を抱えている債券であろうと売却して引出せるお金を用意しなければなりません。
このようにしてシリコンバレーバンクは損を出しながら預金者の引出し依頼に対応していたわけです。
3.SNSによる取り付け騒ぎ
これについては現代ならではだな、と思いますが、SNSによる情報拡散がシリコンバレーバンクにとどめを刺しました。「含み損が出て経営状況が悪化している」という噂が、あっという間にSNSを介して広まったのです。それを知った預金者がまたもや引出しのために殺到、とうとう対応し切れなくなり、シリコンバレーバンクは破綻に追い込まれてしまったのです。
シグネチャーバンクが破綻した理由
シグネチャーバンクが破綻した理由は以下の2点かなと思います。
- シリコンバレーバンク破綻による信用不安の連鎖
- 暗号資産業界への信用不安
1.シリコンバレーバンク破綻による信用不安の連鎖
アメリカのメディアによれば、3月10日にシリコンバレーバンクが破綻した際に、シグネチャーバンクからも大量の預金が引き出されたと報じられています。
これは中堅銀行が破綻したことにより、アメリカの銀行業界全体が危ないのではないかとの懸念が広がったことによるものです。
2.暗号資産業界への信用不安
シグネチャーバンクは暗号資産業界に対して積極的な融資を行なっていたとお話ししましたよね。
実は暗号資産業界で大きな不安材料となることが2022年11月に起きていました。
それは暗号資産交換業大手のFTXトレーディングの経営破綻です。
業界大手が経営破綻となったことにより暗号資産業界全体に対して、ひいては業界への融資を積極的に行うシグネチャーバンクへの不安にも繋がり、預金引出しが大量に発生してしまったのです。
バイデン政権の対応は?
今回の件で頭をよぎるのが、2008年のリーマンショックです。
アメリカで金融危機が起きれば当然、世界中に大きな影響を及ぼすことは避けられません。
そのため、アメリカ政府としてはリーマンショックのような事態はなんとしても避けなければなりません。そこで政府はまさに「異例」とも言える措置を取りました。
それは「預金を全額保護する」ことです。
本来、アメリカでは25万ドルまでしか保護されないのです(ちなみに日本は1,000万円まで)。それにも関わらず、アメリカ財務省などはこのような処置を取りました。そこまでしてでも、リーマンショックの再来を避ける狙いがあったと考えるのが妥当でしょう。
こうして、金融システムの安定化を図ったバイデン政権ですが、我々が気になるのは日本への影響です。次の章で詳しく見ていきましょう。
今回の件による日本経済への影響は?
ここまではアメリカの中堅銀行が相次いで破綻に陥った理由とアメリカ政府の対応についてみてきました。
では今後、日本への影響はあるのでしょうか?
結論から申し上げると、日本への影響は限定的と思われます。
もちろん、アメリカの異例措置が実らず、今後も信用不安の連鎖によって銀行の破綻が続けば別です。
しかし、現時点ではそこまで大きく問題視はされていないのが現実です。
日本の金融機関の多くも債券等で運用は行なっていますので、少なからず含み損を抱えている銀行はありますが、アメリカのように取り付け騒ぎが起こらない限りは破綻に追い込まれる可能性は低いでしょう。
資産のリスク分散の必要性
いかがでしたでしょうか?
今回は金融引き締めによるスタートアップ市場や金利の上昇が原因として破綻に追い込まれた銀行のニュースについて取り扱いました。
ここで皆さんに覚えておいて頂きたいのは、「資産は分散させてリスクを分散させるべき」ということです。
預金、債券、株式、不動産等、投資だけで見ても資産の形はいろいろありますが、ぜひこの中から皆さんにとって最適なポートフォリオを見つけてください。
私も現役の銀行員ですので、皆さんのご質問やご相談についてもできる限りお答えしていきたいと思います。
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